税理士法人吉井財務研究所

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注目される「暦年課税」の見直し案浮上 現行3年以内の相続扱いの期間が拡大か

注目される「暦年課税」の見直し案浮上

現行3年以内の相続扱いの期間が拡大か

 

2015年に相続税の基礎控除額が引き下げられて以降、相続税の課税対象者が増加したことから、相続対策として「暦年贈与」と「相続時精算課税」の生前贈与が活用されている。しかし、ここにきて税理士など税務関係者の間で注目されているのは「暦年贈与」の見直しだ。

「暦年贈与」は、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかからないことから、多くの納税者が相続対策として利用している。その暦年贈与の効果が下がるような見直しが行われたらインパクトは大きい。

暦年課税にメスを入れる意向を示したのは与党の2021年度税制改正大綱だった。大綱は、「諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度の在り方を見直すなど、資産移転の時期に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」との考えを明記した。

そこで、見直しの方向性としては、一つは暦年贈与を廃止し相続時精算課税制度のみを残す方法か、もう一つは暦年課税を存続させるが、実態は相続税に近づける方法が考えられる。暦年贈与の突然の廃止は国民の影響が大きいことから、可能性が高いのは、暦年課税を相続税に近づける方法だろう。具体的には、現在暦年課税の相続扱いは3年以内だが、これを10年以内あるいは15年以内などに拡大するというものだ。

実際、参考にするという諸外国ではより長い期間の贈与を課税対象としており、イギリスは死亡前以前7年間、フランスは15年間、アメリカに至っては生前贈与すべてに相続税を課している。来年以降の税制改正では、こういった諸外国の制度を参考に、相続扱いにする期間を長くすることによって、資産移転の時期に中立的な税制を構築するとともに、実質相続税と贈与税を一体化する方向で議論する可能性が高い。