税理士法人吉井財務研究所

累積投票とは
会社法

取締役の選任決議の仕方は、それぞれの会社の定款により様々です。

原則株主総会の決議により決定しますが、その中の一つの決議方法として

「累積投票」というものがあります。

定款内の「役員の選任の規定」あたりに、「累積投票」というワードが入っている会社様も多いかと思います。

改めて確認しましょう。

累積投票って?

累積投票とは、少数派株主の経営参加を保護するための制度です

 

株式1株につき1議決権の規定は適用されません。

複数の取締役を選任する場合に、1つの議決権について選任する人数分の投票権を与えます。

1人に集中して投票することもできますし、分散して投票することもできます。

投票の結果、得票数の多い者から順に、取締役に選任されるというものです。

具体的には?

発行済み株式 100株

株主 A:65株(議決権65個)

B:30株(議決権30個)

C:5株(議決権5個)

取締役を2名選任したい。

候補者 X、Y、Z

AはXとYを選任したい。

BとCはZを選任したいと考えている。

通常通りの決議で行くと、多数株主であるAさんの議決権が過半数を占めるため、X,Yが選任するでしょう。

 

ここで、「累積投票」を採用すると、議決権が変化します。

A:65株(議決権65×2名=130個)

B:30株(議決権30×2名=60個)

C:5株(議決権5×2名=10個)

 

すると、BとCは全ての議決権を、Zに行使しますので70票獲得します。

Aがどのように議決権を行使したとしても、

X、Y両名が70以上にはなりません。

なので、必ずZは上位2名の中に入り選任されることになります。

 

このように、通常のやり方では、全て多数派のAの意向に沿った取締役しか選任されないのですが、

累積投票を採用すれば、少数派のB,Cの意向も反映させることができます。

 

ただし、監査役を選任するときは使えませんので、ご注意ください。

また、累積投票により選任された取締役を解任する場合は、株主総会の特別決議が必要です。(会309条2項7号)

せっかく累積投票によって、少数株主の意向の役員が選任されたのにも関わらず、簡単にAによって解任されては意味がありません。

その趣旨から、累積投票により選ばれた取締役を、やめさせにくくしています。

 

「累積投票」は、定款で排除することができます。

現状、累積投票を排除している会社がほとんどです。

お手元の定款にもそのような記載はありませんか?

設立時の発起人や代表者からすると、少数株主の声が大きくなると色々と複雑になる可能性があるからだと推測されます。

定款の規定を見落としていませんか?

会社の憲法といわれる「定款」の中には、様々な規定が入りまじり絡み合っています。

会社法も変化してきていますので、3~5年に1度は定款を見直しましょう。

うちの定款はどうだろう?

少しでも気になった方は、吉井財務へお気軽にご相談ください。