税理士法人吉井財務研究所

建物取得による消費税の注意点について(岡山の税理士事例)
消費税

(岡山の税理士事例)

<Question>
A社は前々事業年度中に居住用の賃貸マンションを108,000千円(内消費税額8,000千円)で取得しました。
当期を含む3期分の課税売上高・総売上高・課税売上割合は下記のようになっています。
前々事業年度
課税売上高 60,000千円
総売上高 200,000千円
課税売上割合 30%

前事業年度
課税売上高 60,000千円
総売上高 80,000千円
課税売上割合 75%

当事業年度
課税売上高 60,000千円
総売上高 80,000千円
課税売上割合 75%

通算
課税売上高 180,000千円
総売上高 360,000千円
課税売上割合 50%

当事業年度に賃貸マンションを購入していれば6,000千円控除(8,000千円×75%)されるのに前々事業年度に購入したので2,400千円(8,000千円×30%)しか消費税が控除されませんでした。
購入した時より課税売上割合が大きく上昇した場合、仕入税額控除が増加するような措置はあるのでしょうか?

<Answer>
下記の要件を全て満たした場合には、当期において仕入控除税額が増加します。

? 課税事業者であり、取得課税期間(前々事業年度)・翌々課税期間(当事業年度)ともに本則課税により計算をしている。
? 取得課税期間(前々事業年度)において比例配分法(※1)により仕入れに係る消費税額を計算している。
? 翌々事業年度(当事業年度)の課税期間の末日において、その調整固定資産を有している。
? 取得課税期間(前々事業年度)の課税売上割合と通算課税売上割合の差が±5%以上であること。(変動差)
? 変動差÷取得課税期間(前々事業年度)の課税売上割合が50%以上であること。(変動率)

今回の場合???の要件は満たしているとします。
? 通算課税売上割合50%と賃貸マンション取得時の課税売上割合30%の差20%(変動差)≧5%
? 20%(変動差)÷30%(取得課税期間(前々事業年度)の課税売上割合)=66%(変動率)≧50%

以上のように全ての要件を満たしているので仕入控除税額は増加します。増加する金額は以下の通りとなります。

調整対象基準税額(※2)6,300千円×通算課税売上割合50%?調整対象基準税額6,300千円×取得課税期間(前々事業年度)の課税売上割合30%=1,260千円

※1 「比例配分法」とは、個別対応方式において課税資産の譲渡等とその他の資産に共通して要するものについて、課税売上割合を乗じて仕入控除税額を計算する方法又は一括比例配分方式により仕入控除税額を計算する方法をいいます。

※2 「調整対象基準税額」とは、第3年度の課税期間の末日に保有している調整対象固定資産の課税仕入等の消費税額をいいます。

(岡山の税理士事例)